「何だ、…それは…」
半月前に同じような言葉を発したような、そうでないような
だが、今現在の此の言葉は疑問では無かった―寧ろ返ってくる内容は戯言であって欲しいと願う程だ
「決算の書類です…………明日、二十五日 提出期限の…」
じり、じり、じり…と後退りながら、恋次は非常に申し訳無さそうに事実を突き付けた
ちり、ちり、ちり…と僅かにこめかみが引き攣るのを感じながら、執務机の上の書類を見やる
嫌がらせに近い 此の量
そして、今はちょうど正午を回ったところであった
…一分 否、一秒も無駄には出来ぬ
早速 作業に取り掛かると、恋次が御節介にも昼食をどうするか聞いてきたが
「必要無い」と一言告げると、尻尾を巻いた犬の様に素早く退室していった
硯の墨が尽き、ふと書面から顔を上げた
どれ程時間が過ぎたのかは判らぬが、山のような書類の三分の一は片付き、室温は徐々に下がりつつあった
おそらく、陽は落ちてしまっているのだろう
伝霊神機を取り出して、指を動かす
『十三番隊隊舎で待っていろ』
他に告げることは無いのか と云いた気に、カーソルが点滅している
画面を見つめても何も出てこず、脳裏に浮かぶのは 仕事を終えて待つ姿
『待っていろ』を『待て』に変更する
……
何か 違うと感じ、椅子に背を預けながら言葉を探す
『待っていてはくれぬか』
漸く打ち出した文はそれで
…刻々と過ぎていく時間に我に返り、送信した
筆を取る間も無く、伝霊神機が返信を告げる
『わかりました。 ですが、ご無理はなさらないで下さい』
控えめな文面 そして微かな、諦めの薫りに私は再び指を動かす
『直ぐに終わらせる 必ず』
今度は言葉に迷うこと無く送信すると、書類一枚仕上げれる間の後の 返信
『お待ちしております』
画面其のままに、私は再び筆と印を手に取った
最後の一枚に印を押し終わり、書類は誰かが―恋次あたりが後で取りに来るだろうと積み上げて置いた
あれからルキアからの連絡は無い
隊首室の戸を開けると、其処には『近付くべからず』と貼紙がしてあったが、
それを破り捨てる間も惜しく、私は六番隊隊舎を早急に後にした
戻