さて、何をお話致しましょうか
白哉様がルキア様に初めてお会いになられた日
忘れは致しません
長い年月 白哉様に御仕えして参りましたが、あのように動揺される御姿をみるのは大変珍しいことで御座いました
「あの者を朽木家へ迎え入れる」と一言仰って、私をはじめとする周囲の者が返事を返す隙も与えず、
ひとり神妙な御顔をされて考え込まれていました
ルキア様が朽木家へお入りになられる前日、白哉様は私達使用人 すべての者を集められ、
ルキア様を朽木家へお迎えする“理由”についてお話になりました
そして、其の日
私も一度 お会いしてはいるものの、改めて他の者たちと同じように驚きました
其の御姿は緋真様と瓜二つで…
しかし、ルキア様と緋真様はやはり姉妹であれど 別の御方
白哉様とルキア様のあいだにあるものは、ぎこちない空気で御座いました
…どこかで 私は期待をしていたのかもしれません
以前のように、白哉様に穏やかな日々をもたらしてくれる存在が 白哉様のお傍に居て下さることを
一度 白哉様が呟かれたことが御座いました
それは私に問い掛けるわけでもなく、まして返事を待つものでもありませんでしたが
「あれは 私を怖れているのだろうか…」
私はこの御言葉をお聞きして、何とも…もどかしい 気持ちになりました
御二人をお傍でみていると、何と云いましょうか…第三者の目からではないと なかなか気が付かないことも御座いまして、
決して 怯え だけではないものがルキア様の表情に見受けられ、
時には白哉様の言動にその御顔が柔らかく色付くことも御座いましたのに
なかなか 御互いの御気持ちを言葉に表したり、伝えたりすることが不得手な御二人は、其れ故 長い長い年月をおかけになりましたが、
近頃は 御一緒に御過ごしになるときの空気が―おやさしい あたたかなものに変わったと感じているのは私だけでしょうか
御二人をこれからも 陰ながらお支えしていくことが何よりの御役目と心得て、願わくば
もどかしくも穏やかな日々
が 続きますよう…
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