どんなに藻掻いても離すものか
ルキアを見下ろす白哉の瞳は、静さを固めた中に、僅かな怒りと高揚感を秘めていた
白哉を見上げるルキアの瞳は、絶望と悦びが交ざり合った色をしていた
蝶の標本のようだ
数本の刄で、畳に縫い付けられた義妹を見て白哉は思った
「私を殺して何処へ行こうというのだ…?」
白磁の人形の様に滑らかな頬の輪郭をなぞり、顎に指を掛けこちらを向かせた
ルキアの瞳は一層、絶望の色を濃くした
白哉の脳裏に赤髪の副官が浮かんでは消え、次に萱草色の髪の少年が浮かんで消えた
―苦々しい
「兄様は何も解ってくださらない…」
ルキアの口からぽつりと言葉が、瞳からぽたりと雫が頬を伝った
「身代わりでも良いから と思っていました …ですが、もう限界なのです」
「……」
「傍に居ると、日々欲が大きくなっていく、優しく抱き締められると、嬉しさに溺れる反面、心の中が淀んでいくのです……兄様、どうか『私(ルキア)』を見てはくれませぬか…?」
ルキアを拘束していた刄が桜の花弁になり、散っていった
二人はどちらからともなく、お互いを労るかの様に抱き締め合った
―人知れず 思う心は ふかみ草 花咲きてこそ 色に出でけれ―(賀茂重保『千載和歌集』)
一人嫉妬に狂う白哉兄様(笑)
シスコン魂全開な兄様も書いてて楽しいんですが、こういう兄様も嫌いではないです
何だか腑抜けた終わり方なのですが、私の文章力が足りないのでこんなものです(おい こら)
読んでくださった方、有難うございます!
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