「何だ、それは」

十三番隊 隊首室“雨乾堂”
その戸を開けた瞬間、口から出たのは挨拶では無かった

思わず、手にある重要書類の存在を忘れる程の強烈な色
その部屋は赤と白とそれから緑、黄色で埋め尽くされていた



「知らないのか 白哉、クリスマスの準備だよ」

妙な形の赤い帽子を被って、
それらの中からひょっこり朗らかに出てきたのは
この隊首室の主 浮竹十四郎

「皆に配るプレゼントなんだが、びっくりさせたいから此処しか保管場所が無くてな」
「…」

呆れながら、存在を忘れかけていた重要書類を笑顔の男に突き付けた

「残念ながら白哉へのプレゼントは用意出来ていないんだ」
「…いらぬ」
「日番谷隊長と草鹿副隊長はお菓子詰め合わせにしたんだが…」

赤色の大きな靴の形をしたものを抱えながら、受け取った書類は無造作に文机に置かれる


「朽木は何がいいだろうか?」
さっさと立ち去ろうとしていた歩みが止まった


「ルキアに…?」

「やっぱり最高級白玉粉か?それともチャッピーものか? 何か知らないか白哉」
「……」

「“尸魂界のサンタクロース”のプライドにかけて一番欲しいものをあげたいしな
 何より、喜ぶ顔が見たいだろう」

―!


「…浮竹」
「お ひらめいたか?」


「―その“さんたくろぉす”とやらの役目―ルキアについてのみ 私が引き受ける」






ひととおりの“さんたくろぉす”と“くりすます”についての説明は浮竹から受けた

どうやらその“さんたくろぉす”という者は、

一、 “くりすます”と呼ばれる師走の二十四日の夜、部屋に忍び入る
(因みに、浮竹はルキアには毎年手渡しであったらしい 朽木家の警備を掻い潜る気にはなれなかったとのことであった(当たり前だ)
というか、あの男 私が見ておらぬところでルキアにそのようなことを…ルキアを餌付けしていたというのか―許せぬ……!)

二、 欲しい物を気付かれぬよう、枕元に置いて立ち去る

三、 その欲しい物を察知する能力を有している

…らしい


そして今 私の前に立ちはだかる壁は
『ルキアが欲しい物を察知すること』である

…さて、どうしたものか

邸の廊下を歩きながら思案を巡らしていると、当のルキアの部屋の前
風通しの為か開け放たれた襖から見やれば、ルキアの姿は見えない

しかし、ぱらぱら…と小さな音が聞こえる

その音の正体は文机の上の―帳面
「―日記…」


もしかしたら と過ったのと、一瞬感じた罪悪感


しかし私の指は「知りたい」のひとつで、頁を捲り始めていた