風薫る皐月の候
庭の池の縁に、寄り添うように花菖蒲が二輪
一方が純白の、他方が深い紫の花を掲げて
そして彼らは、瑞々しく美しい緑の刀を身に帯びていた
清らかな水の中に、凛とした姿でそこにある
その白き花、穢れを知らぬ高潔さを帯びて
身にまとう多くの刃は、己を律するかのように天を向く
風に身を揺らされてもなお気高く己を貫く
…嗚呼、兄様、その白く輝く菖蒲は兄様のようです
涼やかな水の中に、柔らかな姿でそこにある
その深き紫、彩の奥に慈愛と誇りを秘めて
身にまとう緑の刃は、己の道を切り開かんと緩やかに舞う
雨に身を打たれてもなお己の色を失うこともなく
…嗚呼、ルキア、その深き紫を抱く菖蒲はお前のようだ
ふと、二人、視線が合えば、声に出せずとも…
再び二人、寄り添う花菖蒲にその眼差しを向けて
同じ時、同じ物を見て、向かい合う思いを抱けることの喜び
―どうも声には出せぬ、ならばお前に文を…―
文提供:詠み人知らず
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