あいつの唇に、紅は必要なくて…

あいつに捧げるのは桃の花じゃなくて…



「おい遊子、夏梨、昼飯どうする…って、何してんだ?」

「一兄、何って雛祭りだからお雛様飾ってんの」
「お兄ちゃん、ちょうど良かった。お内裏様とお雛様一番上の段に飾ってほしいの。届かなくって」

そう言って、女雛を手渡される

自分の両の手に乗る女雛は紅(紅)、丹(に)、朽葉、黄、萌黄、青、二藍、縹(はなだ)、薄色…と何枚もの美しい衣に身を包み、此方を見つめていた


「綺麗でしょう、何かルキアちゃんに似てると思わない?お兄ちゃん」

「はァ…?」


遊子にそう言われ、すっとんきょうな返事をしたものの、眉間の皺を1.5倍深くして自分の手の上の女雛を見つめた


雪の様に白い肌

小さな花びらのような紅い口

艶やかに整えられた黒髪

僅かに薫る香


「……似てねぇよ、全然」
「そうかなぁ?似てるよね、夏梨ちゃん」
「んー、雰囲気が」
「だから似てねぇって、そんな事よか飯!!」
「…何ムキになってきてんの?一兄」
「!……さっさと男の方よこせ」


…そうだ、あいつは女雛じゃない その隣に誰が座るっていうんだよ



―狂おしいほどの独占欲
甘酒で少し酔ったのか…





おまけ