山の端に掛かる夕陽が目に染みる
…―一日が過ぎていく
橙色の空が薄紫に変わっていく様子を大きな瞳に写し
ぼんやりと其れを眺めるルキアの耳に蜩の音が心地好く響いている
縁側に座った体勢から ぽてり と体を横に倒すと
足元から立ち昇る蚊取り線香の香が鼻を擽り、ルキアは小さくくしゃみをした
さら…と髪が頬を撫で、ルキアは目を開いた
「起こしてしまったか?」
「…兄様 私、寝てしまった様で…」
「構わぬ」
心地好かったのは白哉が団扇で風を送ってくれていたから―
そう気付き、「すみませぬ」と、団扇を白哉の手から取ろうとすると、代わりに甘い香りのする冷えた酒の満ちた盃を差し出された
「少し付き合わぬか?」
「有難うございます、いただきます」
盃越しに目だけで微笑むと、白哉も満足気に盃を傾けた
「…あ」
何かに気付いたルキアが傍らに杯を置き、立ち上がったと思うと
ふ…と灯りが消え 辺りが闇に染まった
「ルキア…何を」
「兄様、見て下さい」
再び隣に座ったルキアの指差す方を見ると
ふわ ふわり
淡い光が暗闇の中の二人のまわりを舞う
「蛍です、兄様」
「…綺麗だな」
「はい、綺麗…あ、兄様…」
気付くと白哉の盃に ひとつ 灯りが灯っていた
「甘い酒に誘われたようですね」ころころ…と笑うルキアにつられたか、白哉も…ふわ…と目元を緩めた
そんな白哉の様子を見て
「此処に来て…良かったです」
ルキアが吐息と共に告げる
「来年も…来れたら良いな、と……兄様と、一緒に…」
ぽつり ぽつり 告げるルキアの頬に ふ、と手が添えられ、少女は ぴくり と身を震わせた
「…熱い、酔うたか?」
「―そうかもしれません…」
全て、本音 なのだけれど…
そう ぼんやり考えているうちに目蓋が重くなってきて
ぽて…と無防備に肩に寄り掛かり、すや…と寝息をたて始めた義妹の重みを感じながら、白哉はルキアの手にあった酒に口をつけたのだった
「……来年も、此処で共に」
その声はとても優しかった
避暑話第二弾にして最終話です(爆)
今年は蛍見れず、花火にも行けませんでした…なので二人で消化
線香花火でも良かったのですが、兄様が線香花火を持ってしゃがんでいる構図が何とも面白い事になってしまったので、蛍でお酒を愉しんでもらいました
何だか月●冠のCMみたい…(苦笑)憧れますけどね…
蛍ほたる言ってるのに、振り返ればあまり蛍効果無いような…あれれ…
読んで下さり、有難うございました!
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