見上げれば満月
白哉が庭に面する渡り廊下で冷たい光を深い蒼の瞳に映していると、近づいてくる者が居る
目線を廊下の闇に移すと、月の光が藤色の打掛を羽織った義妹を映し出す
彼女は白哉に気づき、手前で止まると一礼した
「湯浴みか?」
「はい」
頷き僅かに緩んだ頬が桜色に色づいている
月光に艶めく黒髪に誘われ、思わず触れた
「髪が…濡れている」
頬に掛かる一房を指に絡めると、雫が伝い落ちた
その雫が床に落ちるのを目で追う白哉の鼻先を ふわ… と香がかすめ、目の前の義妹を見る
「兄…様…?」
髪を弄んでいた手が肩に添えられたと思うと、くいっ…と軽く引き寄せられた
「っ兄様…」
「…変わった香りだ」
腕のなかの小さな頭に鼻を近付けながら白哉は呟く
「あ…、松本殿に頂いたのです 現世の しゃんぷー というもので、髪を洗う石鹸だそうです いい香りだと思いませんか?」
ルキアは擽ったそうに笑いながら言う
「…あぁ、そうだな―だが」
「…っ」
「非番の前日以外は使うな、良いな?」
耳元で低く囁かれ、ルキアはぴくん…っ、と反応をみせる
「…ですが、兄様何故…?」
おずおずと見上げてくるルキアに白哉は一瞬、質の悪い笑みを浮かべた様な表情を見せたと思うと
黒髪に隠れた耳たぶをついばんだ
「――――――――っ!!!!!!」
「『こういう気』にさせるからだ」
「にっ…兄様っ!!」
腕の中で藻掻くルキアの黒髪の感触を指で、唇で楽しみながら
『悪戯』を仕掛けてきた十番隊副隊長に今度 どんな厭味を言ってやろうと考えた
「―さぁて、一匹目の狼は誰かしら」
『小悪魔シャンプー』のラベルが貼られたボトルを指でつつきながら、乱菊は ふふ…とその魅惑的な唇に笑みをのせたのだった
何だか好色な兄様で申し訳ないです…
満月で更に狼度増量中なので、ルキアは兄様に近寄ってはいけません(笑)
『甘い羂』作成以降、兄様がルキアに好き勝手に絡まれるので、此処に来られる方の 朽木 白哉 のイメージを歪ませていないか少々不安…と考えたりしたのですが、『浅漬け』で散々お馬鹿な兄様を書いてしまっているので、今更といえば今更でした、はい(反省)
ふんわりいい香りを纏う人と擦れ違うと、必ず目で追ってしまう私は匂いふぇちの傾向があるのですかね…
裏漬け 目次