襖を開けたが、其処に彼女は居なかった
日が経つ毎に、部屋の主の気配が薄れていっているのは気のせいではなかった
虚圏へ向かった日から何も変わらないはずだが、彼女が其処に居たという痕跡は虚で、不確かなものに見える
白哉は部屋の隅に置かれた文机の前に腰を降ろした
瞳を閉じて暫くの間そうして居たが、凛と透る彼女の声は聞こえてこなかった
「…行かせなければ、良かった」
兎を型どった乳白色の石の文鎮を掌で包みながら、ぽつりと言った
―痕跡を追い求めてしまうほど、彼女が恋しい…
こひし
「恋し」
離れている人や場所、また事物などに強く心を引かれるさま
(特に、簡単に会うことが出来ないほどの距離がある場合の感情)
■今一番恋しい状況にいらっしゃるであろう、一人淋しい白哉兄様(胡瓜の思い込みダヨー) さっさと虚圏へ行くことを推奨
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