目の前は見慣れた天井だった。

視線を横に移すと、障子から光が柔らかく差し込んでいる。



「白哉様、お目覚めでしょうか?」
襖の向こうから声がかけられる。
「…清家か、入れ」
「お早うございます、白哉様」
無駄の無い動作で襖を開け、挨拶をする家老に向き直ると、清家は
「昨夜はだいぶお疲れだったようで」
と続ける。

「どういうことだ?」
白哉は昨夜の事を思い出そうとするが…思い出せない。


「湯の支度が出来たのでお呼びしたところ、机に伏されてお眠りになられていました」

どうやら書き物をしているうちに眠ってしまったらしい


…ということは

「昨夜、客人は居たか?」
「いえ」
「…ルキアはどうしておる?」
「お部屋でお休みになられています」


夢…ということか

黒崎 一護も恋次も浮竹も…ルキアも


「…最近 考え事をされていた様で、疲れが蓄まっておられたのでしょう」
当主を見ながら、老人は穏やかに言った。


「…深く考え込まれなくても、白哉様はルキア様を大切にされていると私の目には映っております……朝餉の用意が出来ましたら、またお呼び致します」


襖が閉まるのを見届けてから、白哉はゆるりと目線を朝の光が差し込む庭へと移す。

複雑に絡み合っていた糸が するん と解けた。



「お早うございます、兄様」

既にルキアは朝餉の席にて白哉が来るのを待っていた。

「…ああ」と答える白哉の声音は穏やかだ。

それに対してルキアは ふわり と表情を緩めた。



「先日の甘味の件だが…」
白哉は箸を置き ルキアを見た。

きょとん とルキアは瞬きした後
「…兄様が白玉餡蜜をお好きだったなんて存じませんでした」
と微笑んだ。

「いや、あれは…」
白哉は胸焼けに見舞われたことを思い出し 訂正しようとしたが、次のルキアの言葉に憚られる。


「兄様と 同じもの を 同じとき に共有できることが、私はとても嬉しいです…」


そうだ

自分はこんなふうに 嬉しい と感じさせてくれるこの娘を大切にしたいのだ


「ルキア…」
「はい」

「……礼を言う」

「…―はい」


以前よりも更に 穏やかな時間が流れ始める。

不器用だが、あたたかい

こんな兄妹の かたち というものもあるのかもしれぬ



いつか、聞いてみたい

 しあわせか と

ルキアは何と答えるであろうか


私は告げよう

 おまえといて しあわせだ と





小出し連載 最終話です。

まずはじめに

兄様をポエマーにしてすみません

書いていて凄く恥ずかしがりながら、臨界点突破したら逆にギャグと捉えて、勢いでそのままあげてしまったのは今回最大の反省点だと思っております。


兄様が一人 悶々とされている話を書いていたはずなのに…結局、夢オチという部分に文章能力の力不足を感じて頂ければ幸いです。


胡瓜のなかでは不器用さが萌える朽木兄妹なので、夢と希望と欲望を詰め込んだらこんなまとまり無い話に………あれ?

『何事も計画的に』という金融会社のキャッチコピーをこんなに痛感した時はありません。
何だかうだうだ言いだすと あれもこれも と出て来そうなのでこの辺りで。


最後に、全話 根気強く読んでくださった方に改めて 有難うございます。

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