ギンがルキアの右手を取り、そして袖に通した。


ルキアが寝かされたのは襦袢の上だった。

両腕を通し、襟を合わせると「ルキアちゃんはやっぱりこれが似合うなァ」とギンはルキアの首筋を撫で黒髪を指先で梳いた。


「キミにぴったりの―血の色や」


ルキアが着せられたのは血で染められたように紅い襦袢だった。

「あんな澄んだ藤色似合わへん、…だってルキアちゃんはボクと同じやから」

そう言ってギンはルキアを抱き起こし、自分と向き合わせる形にした。

ギンの胸に倒れこむような姿勢で居ると…ふわ…と麝香の香がルキアの鼻を擽り、肩に何か掛けられた。

深紅の蔓珠沙華が描かれた黒色の着物をさっきと同じ様に両腕を通され、着せられていく。

金、銀の刺繍が施された帯を結び、満足そうにギンはルキアを見た。


「じゃあ最後の仕上げやね」とルキアの顎に手を掛け

『―ッ!!』

唇に走った痛み。ギンがルキアの唇を咬んだのだ。

鉄臭さが口の中に広がっていく―


ギンの指がルキアの唇の輪郭を撫でた。


「綺麗やで、クラクラするわ」

うっとり歌うように言いながら、傍にあった行灯の灯りをつけた。


そこには妖しく艶やかな「女」が居た。


「…私…こんな…真っ黒…」

やっと声が出せるようになったルキアは、ぼんやりと自分の姿を見て言った。

「そや…ルキアちゃんホンマは清らかちゃうで、ボクと同じ真っ黒なんや」

ギンが淡々と真顔で告げる。


―ソウ、ヨウシイリスルトキ、トメテクレナカッタ恋次ヲ…ハクジョウダトオモッテイル自分ガイル…

―ジブンヲミテクレナイ兄様…イツモワタシノソバニイテ、ワタシヲオオイカクシテシマウ緋真サマヲ…ズルイトオモッテイルジブンガイル…

…―いつもそうだ。この男は私に目隠しをする…

―いや、鮮やかな目隠しを取り去ってしまうのだ。

―本当の世界は真っ黒だという事を嫌でも気付かされる。


『堕ちたなァ…』

薬の効果が切れているにも関わらず、ギンの腕の中に身を預けているルキアを見て、男は今までに見せたこともない、満足な笑顔になった。




前振りが長いうえに中途半端な終わり方ですが、本番はこの後です、きっと(爆)

裏と銘打っておきながら、生ヌルイ物しか置いてないですが…性的表現は難しいです。

「平和じゃない事自体が裏なんだよ!!」と自分に優しい言い訳をして良しとします。

暗い話で白ルキの次に気になるのが、ギンルキだったりします。
処刑当日の日のギンがルキアに告げた「うそ」の一言が非常に印象に残っているので。

読んで下さった皆様、有難うございました!

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