「お前がずっと傍に居てくれたら、どんなに良いだろうかなぁ」
と、軽い気持ち半分、期待半分で口にした。

しかし彼女といえば

「ずっとなんて、何時迄が隊長の『ずっと』なんですか?
そのようなはっきりしない約束は出来ません」
と、真顔でさらり言った。

当然、その言葉に俺は苦笑した。
でも、彼女の手拭いを絞る手が少し震えていることにも気付いた。


―彼女は恐れている。自分を必要としてくれる居場所を失う事を。

だから保証のない『ずっと』に抵抗を感じる。


…それに何よりこの俺だもんな―


「…きちんと薬を飲まれるのでしたら―考えます」

黙ってしまった俺に向かって、なみなみと白湯が注がれた湯呑みと、薬の包みが差し出された。


そうだな、はっきりしない『ずっと』先のことより
今、俺がお前の傍に居る事が出来るようなことをやっていこうか…


「精進するよ…」

そう呟くと、和らいだ笑みを見せてくれた。





おぼろ

ぼんやりとかすんでいるさま。
はっきりしないさま。
不確かなさま。







■こんな事言いながら、言われながらも、浮竹隊長は意外と長生きすると思います。