師走の七日


今日は兄様と出掛けた
丁度、仕立てを頼んでいた呉服屋から連絡があり、いつもなら邸の方へ運んでもらうところを 今回は珍しく 兄様が出掛けると仰ったのだ

私と兄様 ふたりの非番の日がこうして重なるということは滅多に無くて、だから一段と朝から気合も入るというものだ
折角なので昨年の誕生日に兄様から贈られた雪の結晶を模した簪を挿していくと、兄様が褒めて下さった
嬉しくて 上手く御礼の言葉が言えなかった
浮竹隊長に倣って、昨日から身の回りの整理整頓を始めて良かった 他の簪と一緒にせず、大事に唐櫛笥のなかに仕舞いこんでしまっていたのだ



今回頼んでいた品々は、朽木家の親族一同が会する新年会をはじめとする様々な貴族の集会に着るものだ
羽子板の柄で彩られた振袖と そして松竹梅の刺繍が美しい袋帯 それと訪問着が数枚とそれらにあわせた帯、帯揚げ、帯締めその他色々

貴族の集会は、少し…気が重い
いつもの定例集会であれば兄様御一人で出席されるのだが、正月ともなれば私も出席せざるを得ないのは承知している

何よりも、私が至らぬばかりに兄様に御迷惑をおかけしてしまうやもしれぬと思うと、気が重い

そんなことを着物を見ながら考え込んでしまっていた所為か、兄様に「気に入らなかったか…?」と尋ねられてしまった
ただでさえこのような品々は気後れがするのに、気に入らぬなど恐れ多いことだ
また 御心配をおかけしてしまった



帰り道 私が少しでも興味をもったお店に、兄様は快く付き合って下さった
いつもなら私一人で入る兎小物の店にも一緒に入って下さったり、別の店では兄様から誘って下さった

流石に甘味処は兄様に悪いと思い、遠慮した……でもあの白玉善哉は美味しそうだった…