「兄に、話がある」
縁側に座り茶を啜っていた浮竹の横に立ち、顔も見ずに話を切り出した

「“さんたくろぉす”とやらは『子ども』と『恋人』のところにしか来ないということではないか私としてはルキアの自尊心を傷つけることは好まぬしかも兄は私に隠れてルキアに餌付けを―…聞いておるのか」

返事の代わりに重苦しい溜息が返ってきた

「浮竹」
「…やっぱり、サンタクロースの格好をして渡さないと伝わらないのか…それとも危険を冒してまで忍び込んだほうが良かったのか…」

やはり人の話を聞いておらぬ

「鬱陶しいな、何だ」
「酷いな白哉」
苦笑いを浮かべながら、浮竹は「まあ座れ」というように自分の隣にあった円座を叩いた


「ルキアへの餌付けの件は、昨年 私も馳走になった故……許すが、今後ルキアに物を与えるときは私を通してもらおう」
「…其処まで―いや、それで今日はどうしたんだ?」

漸く話を聞く準備が出来たこの男に、ルキアの日記に書かれていた件を一通り説明することになった




話し終えると、浮竹は表情を引き攣らせていた

「お前…日記を見たのか…勝手に…?」
「別に疚しいことでは無い 欲しいものを調べる手掛かりのひとつだ」
「手掛かりって…お前なぁ」
「他にもルキアの買物の様子を観察したりしている」
「……」

出された茶に口をつけると、外気の冷たさを改めて感じる

「―で、解ったのか? 朽木の欲しいものは」
「……いや  だが、日番谷が言っておるではないか “さんたくろぉす”は特定の者のところにしか来ぬと」

ルキア自身、自分を『大人』だと認識している以上 それを否定する気など無く、『恋人』の存在など以ての外だが


「確かにそういう説もあるけどな、そんな固く考えなくて良いんだ “クリスマス”は皆で楽しむものなんだから
それに、朽木も興味を持ってきているようじゃないか 折角の機会だ、最初の宣言どおり朽木専属サンタクロースの役目を全うしてみたらどうだ? 白哉」