桜の蕾は未だ固いけれど、確実に春はすぐ其処までやって来ている と感じ取れる空気だ。
オレンジ色の髪を遊んでいく風を吸い込んで、ふ と一護は思った。
いつも歩いていた学校へのこの道も今日で最後と思うと、急に妙な愛着を感じてくる。
自分の足元に目線を移すと、さっき迄隣に在ったはずの小さなローファーを履いた足が無かった。
「…おい、ルキア?」
自分の後ろを振り返ると、真っ白な紙を じっ と見るルキアの姿があった。
「…そんなに卒業証書が珍しいのか?」
呆れを含んだ言葉に彼女は一瞬、ちらりと此方をその大きな瞳で見たが、またすぐに元の視線へと戻してしまった。
「ルキア、おい転ぶぞ。前見て歩け。あの―ほら死神学校にも卒業式あったんだろ?」
ぴたり。とルキアの歩みが止まった。
「真央霊術院だ」
「あーそうだ、それ「私は其処を卒業しておらぬ」
静かにルキアはそういった。ゆっくりと証書を持つ両の手を下に降ろしながら。
「在学中に朽木家に引き取られたからな」
「そ、そうか…」
「何をいきなり気を使っておるのだ?私は気にはしておらぬ!」
「ぅわッ、おい―、!」
丸められた証書を鼻先に突き付ける表情はいつもの強気な笑顔だった。
ルキアの手から証書を抜き取る。
「な、何だ一護!?」
「ルキア、止まれ!」
怪訝そうに見てくるルキアの前に手を出して、向かってくる彼女を自分の二歩点前で止める。
「第一四三一号 朽木 ルキア」
「一護…?」
「此処に、死神学校過程を卒業したことを証します」
「おめでとう」
俺はそう言って、真っ直ぐに卒業証書を彼女に差し出した。
「あ、…」
微かに狼狽えた後、ルキアはすっと背筋を伸ばした。
「有難うございます」
誇らしげにルキアは前を向いた。
俺の好きな表情。
あまりにもたくさん『過去』を抱えていても、真っ直ぐ前を見て歩いていく
こいつの道が少しでも歩き易いものであります様に
「因みに何度も言うが、真央霊術院だ、一護」
「―そうかよ…」
卒業シーズンに乗って捏造卒業一ルキ。
一護が恥ずかしい人で申し訳ありません(汗汗…)。
私の中では格好つけ屋さんの一護ですが、これは暴走しすぎました(苦笑)。
恥ずかしながら、読んで下さって有難うございます!
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