「椿が綺麗に咲きました、兄様」


夜着一枚のルキアに自分が羽織っていた朽葉色の羽織を掛けてやると礼の言葉と共に彼女は嬉しそうに言った。

拗らせていた風邪は大方快復した様だが、通常(いつも)どおりのいきいきとした姿にはまだ戻っていない。

「切って活ければ良い」
彼女の文机の上の一輪挿しには水仙が淡い黄色を主張していたが。

「いえ、切るなど…私が庭に下りて傍でみれば良いことです。折角鮮やかに咲いているのですから」



彼女を一瞥して立ち上がり、障子戸を開ければ外は白。
部屋の中に入り込んで来た空気の冷たさに、反射的に戸を閉める。

「あ…」
「悪化する」
いつの間にか隣に立っていたルキアが残念そうな声を出す。
「少しだけです」
自身は藤色の羽織を着て、朽葉色の羽織を私に差し出すと、ルキアはたった今閉められた戸を開け放った。

「換気をしないといけませんし」

備えられた草履を履いて彼女は音も無く白の世界に足を踏み入れる。
後ろで私が眉間に皺を寄せている事を知ってか知らずか、此方を向こうとしない。


そのうしろ姿が亡き妻と重なって、私は腕組の手で羽織を握り締めた。


ルキアはしゃがみ込んで動こうとしない。

「もう戻れ」
声は辺りの雪に吸い込まれて彼女には届いていないのであろうか

ルキアに近づくと、彼女は白い世界の中で唯一紅色の一輪の椿の花に唇を寄せていた。


「あっ…!?」
思わず義妹の腕を取り、立ち上がらせると不安げに此方を見てくる。

内で渦巻く混沌とした気持ちを誤魔化す様に彼女の頬に手を添えた。

「熱が上がってきたようだ」
私の声音に びくり と身を震わせたルキアは許しを請うかの如く私の胸に顔を埋める。

彼女の肩に指が喰い込む程強く抱き寄せた後、私は音も無く愛刀で惑わす紅の首を落とした。



雪の白に散った血は滲むことなく

目蓋の裏に焼きついて離れぬ


ああ、鬱陶しい





兄様の性格がどす黒くなっていっています(笑)。
しかも書いているうちに話の流れを見失ってしまって、此処には無い意識のなかでのやりとりをしているような、何だか噛み合ってない内容になってしまいました…。
表面的には白ルキですが、兄様→ルキア(−緋真)→恋次といった関係を実は匂わせたかったりします。

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