朝 目を覚ますと、視界がいつもより白くみえた
―もしかして、と抱いた期待は当たる
庭に面する戸を開け放つと、目の前には白の世界が広がっていた
私はまるで子どものように、
流石に間着だけでは寒いので、羽織を着て
でも備え付けてあった下駄は履かずに
素足のまま、雪のうえへと降り立った
ふわふわと
でも私の温度で儚く融けていく白い雪
まっさらな白の絨毯に、最初に自分の跡を残す行為が
何だか愉しくて―つい夢中になって
「ルキア」
「―!」
名を呼ばれるまで全く気が付かなかった
兄様は何時の間にか縁に立って、此方を―少々呆れたように見ていた
「…おはようございます…兄様…あの、」
極り悪い思いで、兄様に近づくと
いきなり ふわり と抱きかかえられてしまう
「に、兄様!」
「冷えてしまっておるではないか」
親が子を窘めるような口振で言われてしまっては
抗議の言葉も引っ込んでしまう
布団に降ろされ、“雪遊び”についてどう弁解しようか思案を巡らしていると
「ひぁ…っ!」
兄様の舌が、私の右足の親指を捕えていた
冷たさで感覚の無い筈の足指に感じる熱
それはいつもより熱く、ねっとりと纏わり付くようで
「んっ、や、にいさま」
じわじわと凍っていた皮膚が融け、滞っていた血流が再び流れ出し、
そして甘美な熱を孕みだす
ひとつ ひとつの指を順に丁寧に舐められて、
つい、顔が徐々に火照りだす
身体の心(しん)が、疼く
「に、…っ兄様…もぅ」
ぞくぞくと、冷えでは無い震えに耐えながら、
左足の小指―最後の一本に唇を寄せた兄様に訴えると
「こんなに凍えてしまっては―融かさねばならないだろう?」
強く吸われたと思うと、次の瞬間 からだ全体にかかるのは兄様の重み
そして、兄様の肌から私の肌へうつる温度がとても心地好くて
それと併せてこれから与えられる“心地好さ”を拒む理由も無く
私は、兄様と 融けあっていく―…
朝から何やってるのか兄様…
初雪が嬉しくてはしゃぐ可愛らしいルキアを書いていた筈なのに、いつのまにかがっつり“裏”に(笑)
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