指先を 火傷しそうなほどの熱さが襲う

爪のかたちを ひとつ ひとつ 確かめるように
兄様は、兄様の舌は、執拗に其れをなぞっていく




「…っ」

いつもは 殆ど表情を崩さない兄様が、眉を寄せた
兄様が私のなかにはいってきた ときである


「に…さま?」

其のままの状態で、動きを止めた白哉兄様に問いをかけると、
兄様の背中にまわしていた手を掴まれた


「もしかして…爪をたててしまいましたか…?」

快楽に呑まれつつ 必死とはいえ、兄様を傷つけるなんて―…
そう 青褪める気持ちで言うと、

「誰が手入れした?」
「え、と…自分で です」


今回は特に、切った後に鑢をかけるのを面倒くさがってしまったのもある


兄様は「申し訳…ありません」と言う私の爪を 少しの間 眺めた後、
兄様の大きな手で 私の両手を布団に押し付け、中途半端に中断されていた行為を再開した



今度から爪は私が手入れしてやろう―…
そう 言葉を 私の耳におとして






そして 約束どおり
兄様は私の爪が伸びてきた頃に、手入れをして下さるようになった


兄様の手に支えられながら、ひやりとした鑢が指先に触れる

兄様は爪切を使わなかった
でも、私が自分で手入れするより美しく 丁寧に 私の指先は兄様によって変えられていく




最後の小指の鑢かけが終わって、手が離される と思っていた のに


「―っあ…!」

今迄 鑢の冷たさを感じていた指先に、突然触れた兄様の熱い舌


其処に甘い蜂蜜があるかのように
細かく舌を滑らせながら舐め、時折 唇で感触を楽しんでいる


こそばゆいような、充分に与えられない快さに不満を覚えるような―…

きゅう…っと瞳を瞑れば、兄様は悪戯に私の指の先を口内に含む




自分でも 恥ずかしい程、息に 荒さが混じりだすと

「ちゃんと 引っ掛からぬよう 手入れ出来たか―確かめているだけなのだが」


わざとらしく 少々の呆れを含んだ口調で、掌に唇をおとすのだから
兄様は本当に 意地悪な方だ









仕返しに たてる爪も無く、私は今日も兄様に―…







兄様はルキアのことを総て管理したいと思っていたら良い なんて
爪を切っているときに ふ と湧いて出てきたもの

如何に 常に そういうこと を妄想しているかわかってしまいますね(人間性を疑うよ 笑)


裏漬け 目次