すっかり遅くなってしまった。
恋次が風邪などをひいたばかりに、仕事量がいつもの倍になったのだ。
―おまけに、先刻から雨が降っている。

白哉は小さく息を吐いた。


隊舎の門をくぐった時、重く曇った雨の世界に淡萌黄が映った。

「…ルキア」
「兄様!お疲れ様です」
水仙が描かれた、萌黄の着物を着たルキアが居た。
自分の持つ傘より少し大きな傘を開き、白哉に差し出してくる。


「…長い間待たせたようだな」

延ばされた手は傘には触れず、ルキアの漆黒の髪を一房掬った。
黒はしっとり、一段と艶やかであった。

「いえ、そのようなこと」
白哉の手に添えられた小さな手は冷たかった。

「非番だというのに、このような…家の者に来させれば」
「私が兄様を迎えにあがります と…迎えにあがりたいと言ったのです」
ぎゅ、と白哉の手が握られる。



この娘を、ひどくいとおしいと思った。





やさし

「優し」。
現代の「優しい」の意味とは異なり、
古くは身も痩せるような思い、恥ずかしさという思いが含まれている。
殊勝である。けなげである、りっぱである。
控え目に振る舞い、つつましやかである。







■一番難しかったです。書いていたらお題に添ってないよ…
と自分と兄様とルキアを見失ったまま、
しかし妄想は一人歩き始めますし、
あわわ〜(汗)と訳分からないまま強制終了し、載せてしまいました(沈)。
ご指摘お待ちしてます!
 この後二人は仲良くひとつの傘で帰って頂きたい!!(無駄に熱いな…)