ひやり と額に何かが触れた。
うっすらと瞳を開けると、薄桃色の撫子が映った。
「返事が無かったので、勝手に入って来てしまいました」
「…………朽木」
「熱はどうですか?」
「下がったか…少しは楽になった」
覗き込む様に体調を問うてくるルキアの顔を見て、浮竹は何故か落ち着いた気持ちになった。
「それではお役御免ですね」
ルキアが笑って浮竹の額を見ながら言うので、先程感じた心地好い冷たさの姿を確認した。
額の上で、紅と黒の二匹の金魚が泳いでいた。
「可愛いでしょう、隊長にお土産です」
何も言えずに居る浮竹を見て、悪戯が成功した子供の如く、ころころと少女は笑う。
「一匹しか掬えなかったのですが、独りぼっちでは可哀想だとお店の方がおまけして下さいました」
「…そうか、独りは淋しいもんな」
「―はい。 来年は隊長も絶対一緒に行きましょう!」
無意識に吐いてしまった弱音に気付いたのか、ルキア身を乗り出して力強く言った。
「―あぁ。絶対だ」
ぽかり と空いた空間には ゆらり ゆらりと紅と黒が揺れていた。
小さい頃、お祭りの屋台で金魚すくいの袋を氷嚢に見立てて遊んでいました(笑)。
どうしても金魚はすくえなかった…ポイは薄すぎます(泣)。
淋しがり浮竹隊長。
今回も体調崩していただきました。
子どもの様な一面を時々覗かせる人だなと勝手に思い込んでいます(笑)。
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