ころん、ころん…
畳の上をひとつ、ふたつ 黄色の玉が転がる。
「蜜柑…?」
「柚子だ朽木」
ははは と笑いながら言う浮竹隊長に小さく頬を膨らませながら私は柚子を手に収めた。
「…良いかおりです」
「だろう?うちの庭で採れたんだよ。今日は冬至だから柚子湯に入らないと」
「柚子湯?」
浮竹隊長は畳に転がったもう一個の柚子を私の手の中に預けた。
「冬至に柚子を浮かべた風呂に入ると、一年中風邪をひかないといわれているんだ」
「…隊長が仰っても説得力がありませんが…」
そう笑いながら返すと、浮竹隊長も苦笑いし、ふ、と口の傍に手を当てて こそり と言った。
「…『融通がきく』といった効能もあるそうだ。白哉にはぴったりだと思うんだが―」
一瞬、柚子を浮かべた湯船に入る兄様が過って私は苦笑いし、
浮竹隊長も声を出して笑ったあと…大きく咳き込んだ。
「兄様にも伝えておきます」
「余計な事は秘密だぞ」
「…」
「朽木、絶対に内緒だぞ」
柚子の薫りを楽しみながら、あせあせと苦笑する目の前のこの人が
来年一年、恙無く過ごすことが出来るよう、密かに祈ったのだった。
柚子湯は薬湯で邪気を祓い一年中風邪をひかずにすむそうで、浮竹隊長にとって欠かせない行事の一つであろう『冬至』(笑)。
柚子と「融通」がきくとの語呂合わせもあるらしく 是非兄様にも! なんて考えてしまってすみません…
読んでくださった方、どうも有難うございます!!
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