目の前の白い山と睨み競(にらみくら)してみるも、勝てそうになかった
「…あ────っだ、もぅ!!」
机を叩いて立ち上がるも、白い山はびくともしない
その代わり、縁側で囀っていた小鳥達が一斉に空へ飛び立った
ルキアは文机の上を陣取る白い山―書類の山を忌々しげに見下ろした
いつもの彼女なら、こんなに時間はかからなかった
浮竹が急に吐血して、臨時の隊務が入っても何の事なかった
いつもと違った事、それは─…
「…─折角、兄様が誘ってくださったのに…」
本日、義兄は非番であった
ルキアも非番で、昨夜夕食後二人で茶を飲んでいる時、突然白哉が言い出した
「明日、二人でどこかへ出掛けぬか?」
義兄がそんな事を言いだすのは初めての事で、ルキアは驚きと喜びの所為で、暫くの間動けずに居た
「…嫌なのか?」という不安な白哉の声で我に返り、慌てて「そんな事!是非!出掛けましょう、兄様!!」と返したのだった
白哉は微かに笑って(確かにルキアにはそう見えた)、「行き先はお前が決めると良い」と告げられたのだった
床に就く前に、着て行く着物を決めた
夏らしく菖蒲が描かれた品にした
何処へ行こうか、今は青楓が見頃だろうか―などと、なかなか寝付けなかった
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