時計が終業時刻を指すと同時に、伝令神機が受信を告げた

『六番隊舎前で待っていろ』

あの人らしい、簡素な文面に促されて私は十三番隊舎を後にした




走って来た所為であがった息を整えながら、六番隊舎の門に背を預けて待つ


帰っていく六番隊隊士を何人か見送った後、私は中を窺おうとして、
「ルキア」
「ひ…っ!、―あ、兄様…」
驚いて振り返ると、隊舎に居られると思っていた兄様が立っていた

「…隊舎に居られるのかと…」
「用があって少し出ていた」

歩き出す兄様に慌てて付いて行きながら、私は兄様が珍しく手荷物を持っているのに気が付いた

「あの…っ、持ちます」
「―いや、構わぬ」
少し此方を振り返り、兄様はそう言ってその風呂敷包みを前に抱えなおした

「……」

静か過ぎる空気がふたりを包む


道の端の桜の木々は葉桜になってしまっていて
ちらりと前を行く兄様を見て、私はひとり溜息をついた


今年こそ、今年こそ―…一緒に桜をみることが出来たら…
毎年そう思って、思うだけで、桜の時期を過ごしている

しかし、季節は春

新入隊士は隊務に少しでも早く慣れようと必死に日々を過ごし
その指導に当たる先輩隊士は己の仕事も併せ、更に忙しく
その隊士達を取り纏める立場である 隊長 ともなれば言わずもがな、尚更忙しい


仕方無いとは解っているのだが
そんな子どもみたいな我侭な感情を振り払って、ふ と気付く

「あ、あの…兄様」

兄様は屋敷への道とは異なる方向へ歩みを進めていた