第一印象
理解し難い種類の人だ と思った
理解しようとすることが、そもそも誤っている と感じた
いつからだったか 私が兄様を理解しようとすることを 諦めてしまったのは
羽の音
あたたかなものに包まれていた でも、心(しん)から冷たいものが身体を侵していく
じわり、じわり、と拒絶するように
その感覚はとても不快なもので、私は身を硬くする
居心地が悪いはずなのに、そのあたたかなものを失うことを私はとても怖れている―とても
そうして思考と身体がちぐはぐになっているあいだに あたたかなものは、するり といってしまうのだ
躊躇も無く、私を置いて
朝が 嫌いだ
目蓋は閉じたまま、外で囀りだした鳥の声に耳を澄ます
意識はとうに覚醒に至っているものの、肢体がまだ安静を求めていた
関節を動かすと、錆びた金属が擦れ合う音がしそうだ と、目覚めてから同じ体勢で布団に身体をあずけている
どうせ、今日の勤務は宿直だ 起しに来られるまで、微睡んでいよう
そう決めて、寝返りを打った、とき
ひやり、とした感触が頭から足先を包み込んだ
曝された肌は触れるもの総てを鋭敏に感じてしまう
傍に温もりが無いことも
「…―っ」
乱暴に布団を撥ね退けると、障子戸の向こうから鳥の飛び立つ音が聞こえた
しどけない姿のまま、布団の上に座り込む
耳を澄ますと、もう聴こえない筈の羽音が未だ残っていた
進
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