本日、久々の晴天
昨日まで降り続いていた雨の気配は
太陽にかき消されて、全くと言っていいほど残ってはいない
俺を追い越して、元気に店通りを駆けていく子ども達を見ながら、思わず目を細めた
俺の少し前を行く ちいさな姿
死覇装の黒に対比して、日傘の白はとても眩しく思える
「朽木!今から休憩か?」
「―浮竹隊長!」
くるり と優雅に白を翻して此方を向いた朽木は、声をかけた俺の姿を認めると駆け寄ってきた
「隊長はこれからお昼御飯ですか?」
「ああ、…あれ、朽木もう済ませたのか?」
ひとり飯も何だしな…と考えていたから、多少がっかりして問うと、
「お昼はもう済ませたのですが…少し、甘いものが欲しくなったので…」
と呟く
「なら少し付き合え、白玉餡蜜でもご馳走するぞ」
食事と甘味どちらも取り扱っている食事処を思い浮かべながら誘うと、
遠慮しながらも、好物への誘惑には勝てなかったのか
少し悩んだあと、「…ご一緒します」と言ってくれた
「浮竹隊長、陽射しが強いですし、お入りになって下さい」
そう日傘を精一杯掲げながら言ってくれるが、俺と朽木の背の高さでは到底無理な話だ
「いや、大丈夫さ それに漸く梅雨が明けたんだ、久々に太陽の恩恵に与らないと」
…―ぽたり
「う、浮竹隊長!!」
「…ん?」
汗と思い、鼻の下を拭えば、手は真っ赤に染まっている
「あ―…」
それが 汗 ではなく、鼻血 であるとわかる前に、目の前が白から黒に変わった
「……鰹だしのいい匂いだ」
「気絶したまま、食欲をそそられないで下さい」
がやがや…とした気配のなかに、耳慣れた部下の声
「…朽木…」
意識がはっきりしてきた
朽木は困ったような、少々怒っているような顔をしていて、
俺が今横になっているのは、何処かの食事処で…
「えー…と、俺は…」
「鼻血を出して倒れられたんです。近くのお店だった此処に休ませて頂いたんですよ」
言い終わるや否や、朽木は冷えたてぬぐいを俺の額に当てた
「それは、すまなかった―」
「きちんと日除けになるものを持って、お出かけなさって下さい」
そう言う朽木はまるで、子どもを叱る母親の様だ
思わず笑ってしまった俺に、更に朽木は「ちゃんとわかっておられますか!?」とますます怒り顔になる
そのとき、俺の腹のむしが鳴いて
「あ―…、朽木 白玉餡蜜食べ損ねてしまったな すまん」
と告げると、彼女は一瞬、ぽかん とした表情になって
笑い出した
俺もつられて更に笑いながら、
「また今度、今日のお詫びも兼ねて」
とちゃっかり約束を取り付ける
でも朽木は
「そのときはきちんと日除けを持ってきて下さいね」
としっかり俺に念押しをしたのだった
卓に置かれた硝子の杯のまわりには、小さな水溜りが出来ていた
仮の題は『キラリ☆熱中症!俺と白い日傘と鼻血』でした
浮竹隊長はいい人過ぎるといいますか、この方の世界はとても優しいと思います
なので浮竹隊長目線は難しいです
ただ、いつもにはないちょっぴり押し気味な浮竹隊長が書きたかったのですが…し、しまらない!(というか、やっぱりしまらせることが出来ない…!)
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