窓の外は、優しい色の夕焼け空で、また此処に居心地悪そうに座る少年の髪も同じ色をしていた。


「…話って何だ?」
と一護が切り出してから半刻が過ぎていた。


一護を呼び出した張本人、朽木 白哉は、目を伏せたまま返事をしない。



『…ハラ減ったな』と一護が大きく溜息をついた時 ―

「―兄には、妹が居るのか?」

白哉がぽつりと言いだした。


「ん?あぁ二人居る」

―元気にしてっかな、と双子の顔を思い浮べる。


「では兄は『兄』という立場にあるのだな」

「白哉も『兄』だろ、ルキアの」

一護がそう切り返すと、白哉は一瞬、驚いた表情を見せた後、また目を伏せてしまった。


「…そう、なるのだが―私は…」

歯切れの悪い返事を聞いて、一護はルキアの処刑に纏わる白哉の心中を察した。


「…ルキアとはちゃんと話したし、アンタのために粥作って来てたりして、和解できてたじゃねーか」


「…そう…なのだが、―私は、『兄』としての接し方が判らぬ…」

白哉は自嘲気味に息をつく。

「おぃおぃ…今まで何してたんだよ」

「…何を話して良いか判らぬ故、あまり話をしなかった。
 顔を合わせたり、話し掛けたならば、ルキアは俯いて口から出るのは謝罪の言葉ばかりだった…」

「あ〜、アンタがそうやってムッツリ黙ってれば、怒ってると思うだろ」

「―兄も眉間に皺を寄せて、人相が悪いではないか」

「わぁるかったな!人相悪くても、こちとら妹は怖がんねーし、謝りもしねーよ」

「―…」



『ただ、不器用なんだよな―』
一護は、ふぅー…っと長い溜息をついた。


「…―まず、妹ってのは、俺は兄として護ってやるものだと思ってる。
 それはアンタも出来てるんじゃねーか?

 後、直したらってところはだな…

 …あぁ、そうだ。話すときは目線の高さを合わせたら良いと思う。
 只でさえルキアは小さいんだ。
 立ったまま話すときは特に、少しかがんで話した方が威圧感もなくなるしよ
 …そうすればルキアも怖がらねぇんじゃねーか?

 ……まぁ、慣れだ!」

語っていた自分に面映ゆくなったのか、一護は頭を掻いた。


「―そうか………………………………礼を言う」
「何か、礼言われてるとは思えねぇな…」


窓の外には一番星が輝きだしていた。