………視線が…、痛え………


鯛焼きに噛り付こうと大口を開けたところで、恋次は斜め前から浴びせられる視線に溜め息をついた。
視線を合わせると眉間に皺を寄せて、目を伏せる。

朝っぱらからずっとこの調子だ。

折角の休憩時間だというのに…こんな状況では折角の鯛焼きもあまり味がしない。


「…あの、俺に何か?」

……………………なんて気軽に聞ける相手ではない。こんな時は見て見ぬふりが一番だ。



しかも、今日の白哉はいつもに増して纏う空気が重かった。
お陰で六番隊隊舎の空気の温度は普段より低く、話し声もせず静まっていた。



―俺は何もしてねえ!ルキアに手 出すなんて、そんな大それた事してねえからな!!

恋次は半ば自分に言い聞かせる様に、そう白哉に念を飛ばしつつ、残りの鯛焼きを口に詰め込んだ。



恋次の一日を観察すれば、何かルキアとの仲を深める手掛かりが見つかるかもしれぬ―そう考えて、ルキアの顔を見ぬまま、朝早く出勤したというのに……観察すればするほど解せぬ…

恋次から目線を反らし、白哉は目を伏せ思った。


落ち着き無く足音をたてて歩き、妙な眉毛であり、着物の趣味は…何故あんなに派手なのか…それに加え、今も鯛焼き三個目を頬張っている…

―少々、考え過ぎた様だ。軽く頭痛がする。


白哉が意識を現実に戻すと恋次は既に居なかった。




兄妹の かたち といふもの 4