昼下りの隊舎は、相変わらず静かだった。


白哉が廊下を歩いていると、隊舎入口の方にルキアの霊圧を感じた。
其処へは恋次も近づいている様である。

暫しの間、白哉は入口少し手前で霊圧を潜め、様子を見ることにした。



「おう!ルキア テメー何か用か?」

「恋次!浮竹隊長から書類を預かって来たのだ」

そう言ってルキアは書類の束の入った封筒を恋次の目の前に掲げる。

「そりゃご苦労さん。…相変わらずちっせーなぁー、オイ」
恋次はルキアの頭を片手で ポンポン と軽く叩きながら言った。
「なッ!うるさいっ!!貴様こそ面白眉毛に髪の毛が敗けてきておるぞ!!」
「ばっ、おまえ、これは剃り込んでんだよ!!」


静かだった隊舎に響く痴話喧嘩。
通りかかる隊員達は微笑ましげに二人を見遣る。


そんな中、何か思いながら執務室へ向かう白哉が居た。




「失礼します、十三番隊 朽木ルキア、書類をお持ちしました」
「…入れ」

無駄な動作、戯れの言葉無い やり取り である。


しかし そのやりとりの中、普段通りの白哉の様子を見て、ルキアの表情が僅かに和らいだ。

それには気付かず、白哉は手渡された書類に黙々と目を通し、捺印していく。


「では、此れを浮竹に渡してくれ」
「承りました。では、これで…」
一礼をして執務室の入口に向おうとしたルキアの頭に ふわり と何かがのせられた。


「…小さいな」


「……………………………っ」


ルキアは一瞬、何が起きたのか解らず、瞬きした後俯いた。

白哉の手は するり と髪を滑っていく。


―沈黙。


「…隊舎へ、戻らなくては…」

口を開いたのはルキアだった。

「…ああ、そうだな」

「では、失礼します」

ルキアは一度も顔を上げずに、一礼して退室した。


戸が …たん と音をたて 閉まった。


…何故、こうなるのか…

 浮竹や恋次と何が異なるのだ?


白哉はついさっき迄黒髪に触れていた手を右目に当て 目を伏せた。