「…ルキア様が、心配しておいででした」
ごくん、と喉が鳴った。
自分より言葉数少ないこの老人 清家から、珍しく発された言葉に白哉は冷静を装いながら目を伏せたまま、胸焼け解消に持って来させた濃いめの茶を胃に流し込む。
「……そうか…」
ルキアが…―胸の奥に ふ、と温かなものを感じたのも束の間、しつこい胸焼けに覆われてしまった。
やはりルキアとの仲を深めるのは無理なのであろうか…四十年も擦れ違ってきた結果、出来た空間は少しの事では埋められぬのやもしれぬ
目蓋を少しばかり力をこめて伏せている主人を見て、老人は丸眼鏡の奥でほんの少し、苦笑した。
「おはようございます、清家殿。…あの、…兄様は…」
御膳が一人分しか用意されていないのを見て、ルキアは部屋の入口に立ったまま、傍に控えて居た清家に尋ねた。
「おはようございます、ルキア様。…白哉様は何でも調べ物がお有りの様で、先に出られました」
「そうですか…、…その、昨夜は御加減がよろしくなかった様なので、気になって…」
ほっ…とした表情を見せ、純粋に義兄を心配する義妹を微笑ましげに見ながら
「…さて、どうしたものでしょうか、白哉様…?」
と清家は蒼く澄んだ空へ問い掛けた。
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