「そうか、一護君来るのか…」

ずずー…と緑茶を啜りながら浮竹は言った。

「何故、私に黙っていた?」
「黙っていたわけじゃないさ、朽木から直接言った方がいいと思ったからだよ」

穏やかに告げられると何と返せば良いかわからなくなる。
白哉は口をつぐんだ。


「…俺も朽木のことは娘の様に、妹の様に思っていたからなー恋人が出来たとなると…少し淋しいが、幸せならいいと思うよ」

普段に増して仏頂面に見える白哉に苦笑いしながら浮竹が言う。


雨乾堂の入り口の簾が さらり と風に遊ばれている。


「…馳走になった」

白哉去った後の座布団の前には手の付けられていない緑茶がぬるくなっていた。



この少年と対峙するのは何度目か


夕焼け色の髪の少年 黒崎 一護は白哉に臆することなく、向き合っていた。
その隣にはルキアが正座し、頭を下げている。


庭の木にとまっていた鳥が葉音をたて 飛び立った。


「……………―よかろう」
長く深い沈黙の後、白哉が一言そう告げた。

「―アリガトな 白哉」
「…有難う、ございます 兄様」
二人揃って頭を下げる。


『俺は、ルキアをこれからも大切に守りたいと思う』

先程、一護が真直ぐに告げた言葉が耳に響く。

…これで、良い

……本当に、これで


「では兄様、私は一護を見送って参ります」

「―ああ」

「じゃあな、白哉」


…たん と襖が閉められる。


先程から感じる違和感

そうだ ルキアの顔をまともに見ていない


礼を述べるルキアの声音は幸せそうで―白哉の心に ちくり としみた。


『俺は、ルキアをこれからも大切に守りたいと思う』

そのとおりだ

ルキアが…大切だ


―幸せで、あって欲しい


それを自分は一まだ伝えれていない

「―っ」

白哉は突然立ち上がると、ルキアが消えた襖を勢い良く開けた。