朝起きて見る庭
出勤の道程

日々 色づき 深まっていく世界





朝餉の席で聞きたくない音が鳴った。


「…突然だが、一番隊まで出向くことになった」

淡々と、僅かに眉間に皺を寄せて兄様が告げた。

「…非番だったのだが…」

ぽつり、と言った兄様に対し、私は落胆を隠し、笑顔をつくった。



玄関で兄様は ちらり と此方を見られた。

「―大丈夫です、お気になさらないで下さい」

見送りの言葉を述べ、頭を下げた時 ふ、と感じた既視感。


「早く、戻ってきて下さい」

いつか兄様が隊務に向かう私に言った言葉を、もう姿が見えなくなった兄様の背中へと小声で投げた。



廊下を行きながら、脳裏には初夏の情景。
臨時の隊務と焦燥感に行き場の無い苛立ちを持て余していた私の元に、兄様は兎の薯蕷饅頭を差し入れて下さったことがあった。

胸の内が ほっこりと温かくなるのを感じながら、私は歩みを進めた。


「すまぬ…少し良いか?」
朝餉の片付けに追われている炊事場に おずおず と声をかけた。



手に付いた御飯粒を洗い落としながら、格子のはめ込まれた窓から外を見ると、随分と陽は高くなっていた。


「…どうすれば、良いものか…」

目の前に並んだのは野菜の煮付け、にぎり飯、そして手間取った末焼き上げた不恰好な玉子焼きだった。

金の蒔絵で紅葉が描かれた重箱と交互に見て、私は項垂れた。

…不似合いすぎる。

そう感じながら、にぎり飯などと、重箱とを睨んでいた。


「あら、ルキア様。失礼しますね」
「いや、私の方こそ…」
使用人が勝手口から顔を覗かせた。

「あの…それは」
私が使用人の抱えているものを尋ねると、今夜の夕の膳に使うものらしい。

「―少し、相談があるのだが…」
使用人は二、三度瞬きした後、快く承諾してくれた。