『何故だ!身体が動かない!!声が出ない!!』
只、恐怖が彼女を包んでいた。
「身体、力入らへんやろ?…恐い?」
そう、耳元で囁かれた。
顎を包んでいた冷たい両手が徐々に襟元まで下がってくる。
「逢うた時にも思ったんやけど、この着物ルキアちゃんには似合わんで」
『…当たり前だ。だってこれは…』
「お兄サマの奥さんみたいや」
『緋真様のお着物だったのだから…』
「…そやから脱がしてしまうで」
『―ッやめろ!!』
市丸ギンは蝶の刺繍が施された銀色の帯を簡単に解き、身体の自由を奪われた少女の着物を、襦袢を広げていった。
「真っ白や…」
目の前に曝け出されたのは、処女雪の様な白さを持った細い肢体だった。
ギンは思わず息を飲み、暫くその白さを眺めた。
『…何故、何故こんな―…辱めを…』
ルキアの瞳から涙が伝った。
―ツ…と瞼に湿った温かさを感じた。
「そんな泣かんでもエェやん…」
目を開けると直ぐ傍にギンの顔があった。
ギンはルキアの頭の下と膝関節に手を差し入れ、抱き上げた。
一糸纏わぬルキアは身震いする。
ギンはルキアを抱き抱えたまま、隣の部屋へと続く襖を足で器用に開け、そしてルキアを敷いてあった布の上に寝かせた。
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