*恋次とルキア*

「薬…升?」
「違う違う、ク リ ス マ ス だよ、クリスマス」
ルキアのはずれた聞き返しに苦笑しながら、織姫は人差し指を振りつつ言い直した。


 Red HOT Chili Christmas



空座町の商店街。
行き交う人々は足早に、でも大きな荷物や箱を大切そうに、嬉しそうに抱えている。
そんな人々を眺めるように、大きな樅の樹が商店街の中央に鎮座しており、色とりどりのオーナメントやイルミネーションで飾り付けられていた。

買い物に来ていたルキアと織姫だが、このクリスマスツリーの前でルキアの足が止まった。

「樹に色々と付いているが、何かの祭か?」

真面目な顔で尋ねてくるルキアに織姫はびっくりして
「クリスマス、尸魂界にはないの?」
と尋ね返すと、薬と升 なんて疑問を含んだ言葉が出てきたのだった。

「クリスマスはね、イエス・キリストさんの降誕祭なんだよ」
「ふむ…」
「クリスマスにはこういうクリスマスツリーを飾って、サンタクロースさんからプレゼントを貰うんだよ」
「サンタクロース?」
「んーと、赤い人…髭は白くて…何て説明すれば良いのかな?」
「クリスマスという誰かの誕生日の祭は赤い人から贈り物を貰えるのだな…」
どうやらわかったらしい と、お互い勘違いのまま納得した。


織姫と別れたルキアは浦原商店の戸を叩いた。
「恋次は居るか?」
「おい!居候ー」
来客の対応に出て来たジン太はリボンのかかったサッカーボールを脇に抱えていた。

…やはり、井上が言っていたとおりだ。

「何だ、どうしたルキア?」
ジン太を押し退け、恋次が出てきた。
「…恋次、その…今日は『クリスマス』という日だから―」
ルキアの突然の訪問にも驚いたが、こう上目遣いで言葉を溜めながら話してくるルキアの姿にも心拍数が上がる。
「おう…、クリスマスだから、何だよ?」
「何でも、良いか?」
「オメーが選んだものなら何でも良いぜ」
「じゃあチャッピーの耳あてをくれ」

「…―ッ何でだよっ!!」
ルキアからプレゼントを貰えるのだと大幅な勘違いをしていた恋次は慌てて聞き返す。

「井上から聞いたのだ、クリスマスは赤い人から贈り物を貰うのだ と」

確かに自分は赤い(髪をしている)が…いや、そうではなくて。
こう真面目に返されては開いた口が塞がらない。


その後ろの障子の向こうでは「朽木サン面白いですねぇ、阿散井サンが不憫だ」と浦原が笑い、赤いサンタ服を着たテッサイは雨にプレゼントを渡していたのだった。








いつ 設定したのか覚えていない
久しく聴いたことのなかった着信音−三年ほど前に流行っていたメロディ が

ちょうどTVドラマを見終えた9:55に 鳴った


「久しぶり 元気か?」

送信元に表示された名前は
本当に、ほんとうに久しぶりの
進路が別々になって、むこうが一人暮らしをはじめてから ぱたり とやりとりのなくなった
幼馴染のものだった

「恋次…」
自分の口から、この名前がでるのも本当に、ほんとうに久しぶりだ

うきうき とも、ふわふわ とも
何とも言い表しようのない気持ちが全身にひろがって
そういえば、保育園のときは此奴のことが好きとか嫌いとか?
小学校の高学年くらいから、何だか無駄に意識したりして?
それからはなんとなくの つかず離れずな関係だったような??

そう考え出すと 懐かしい のひとことでは足りない
その思考は文字を綴る指の動きを速くしたり、緩やかにしたりする

今 現在 君は何してる…?




 なんとなしの幼馴染から、予想外の関係に変わる瞬間