先程からずっと 目線は窓の外と時計を行ったり来たり

手元の明後日期限の書類は、既に視界に無い



―漸く 終業を告げる太鼓の音が聞こえ、
筆、硯などを急いで片付ける

一日の仕事を終えた開放感から欠伸や伸びをしたり、
今から片付けにかかろうとする他の隊士の方々に
お先に失礼します! と慌しく告げ、
はしたないと思いながらも廊下を駆け抜けた


隊舎入口で見上げると、窓から見えていた空よりも更に 重く 暗く 垂れ込めた雲が広がっていて、
私は傘を引っ掴んで、隊舎を飛び出した









十三番隊隊舎から朽木の邸まで、こんなにも遠かっただろうか

人通りが無い所為か、いつも通る道は何だか知らない道の様で、私は更に走りを速める



心持 辺りが灰暗く、私の頭の遥か上を支配している筈の空が垂れ下がってきている様な感じを覚え
小さく身震いをした そのとき、


辺りが 光った

―!

思わず、両の手で耳を塞ぎ、転がる様に曲がり角を曲がった次の瞬間、
それは雷鳴だったか、もしくは私が物につきあたった音だったか
大きな音が耳に響き 突如、私は均衡を崩す

強く目を瞑り、地面に体が打ち付けられるのを覚悟した。


しかし、


「何を、急いでおる」


その声に、私は呆然とする


ひとりで尻餅をついた方がどんなに良かったか
ぶつかったのが見知らぬ人であれば、どんなに気が楽であったか


そんな一瞬の現実逃避も空しく
私は白哉兄様に支えられていた


「も、申し訳ありませぬ!」
急いで兄様から身を離し、うろたえて頭を下げる
まさか兄様にぶつかってしまうなんて
混乱と申し訳の無さから、顔が上げられない

数秒の沈黙の後
「…構わぬ 帰るぞ」

そう告げられ、漸く私が顔を上げたのと同時に、光が空を大きく裂く

「―っつ!」
身構えた後、大きな爆発の様な音が辺りを襲った

「…」
「あ、」


咄嗟に、銀白風花紗を掴んでしまっていた
その上、情けないことに 手が震えてしまい―掴んだまま動いてくれない

私に、私の手に注がれる視線を感じる
「……」
おそるおそる、視線をうえに向けると
しかし兄様は ちらり と此方を見ただけで、また歩き始める



ただ、その振り向いた瞳には ほんの僅かであるけれど、手のかかる子どもをみるような

そして、


兄様の 優しさ を感じた





相変わらず 雷鳴は鳴り響いていたけれど、先程よりは怖くなくなっていた






この文章は『雷と白ルキ』という素敵な提案を頂いて出来上がったものです。
提案下さった方、本当に有難うございます!

私自身
雷が大の苦手ということから、何だか凛々しさの欠片も無い弱々ルキア
そして言葉は少ないけれど、絶対ルキアの危機には駆けつける+傍にいる白哉兄様…


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