娘さん 娘さん おめかししてどちらへお出かけ?
「おやぁ、ルキアちゃん? こんにちは」
ひらりと桃色の着物を翻しその男、京楽春水は一人の少女に声を掛けた。
「京楽隊長、こんにちは 浮竹隊長に御用ですか?」
ルキアが挨拶と共に頭を下げた時、黒髪から覗いたものがあった。
今日の彼女は雰囲気が違うと思っていたが…
そういえばいつもは肩にかかっている髪を一方の耳の後ろで纏めていた。
「珍しいねえ、髪を上げているのは」
「え、あ…変でしょうか?」
一瞬ルキアの眉が哀しそうに下がった。
「いやいやいや、そういう訳じゃあなくてね…その簪は誰かからの贈り物かい?」
京楽のその言葉に、ルキアは雪の結晶の形をした簪に そっ と手をやりながら頷いた。
僅かにはにかみながら
「…それを贈った人はルキアちゃんの事をとてもよく理解している人なんだねぇ」
「え…」
にっこりと笑む京楽にルキアはまばたきを数回繰り返した。
「よく似合ってるからさ。贈り物をする時は、贈り物をしようと思い立った時からその相手の事を想うからね。
何が良いかな? どうすれば喜んでくれるのだろう? 気に入ってくれるかな、とかね。
ルキアちゃんにそんな嬉しそうな顔させる奴がにくいねぇ」
片目を瞑って言う京楽の言葉にルキアは頬を紅に染めた。
『しあわせの色ってのはこんな色かもしれないね』
顎に手をやりながら京楽はふ、と思った。
「さぁて、ごめんよ。お仕事の邪魔をしちゃって。可愛らしいお嬢さんを見掛けると つい ね」
「いえっ、そんな…」
ひらひらと手を緩く振りながら出した歩みは一歩進んで、止まって、くるりと此方を向いた。
「ちょっと遅くなっちゃったけど―誕生日おめでとう、ルキアちゃん」
「…え、あ―有難う、ございますっ!」
慌ただしく一礼をして上がった少女の顔は花のような笑顔で
京楽は満ち足りた気持ちを感じながら、友の元へ向かったのだった。
君のしあわせはみんなのよろこび
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