「…え?兄様!?」


義兄が十三番隊舎―自分の仕事場に現れたので、うっかり約束の時間を過ぎてしまったと焦ったが、時計はまだ終業時刻を指していなかった。



「隊務が早く片付いた故、出向いた迄だ」

そう淡々と言う兄様の肩を軽く後ろから叩いて
「自分の隊舎でおとなしく待って居られなかったんだよなぁ、白哉! というわけで、朽木 今日は此処までで良いぞ。御苦労さん」
と、にこにこ悪気なく言う浮竹隊長を睨む兄様に少しこそばゆさを感じながら、急いで帰る支度をした。





六番隊隊舎より十三番隊隊舎の方が屋敷からは遠い位置にある。


いつもより長めの帰り道

いつもより嬉しさの多い帰り道


自分の頬の緩みを気付かれまいと、今日の出来事―清音殿と小椿殿の言い合いが浮竹隊長を巻き込んでの大騒ぎになった事。隊舎の庭の木で、今日初めて蝉が鳴いた事。など、他愛無い事を兄様に話していた。




―ポツン と一滴 雫が鼻先に落ちたので、空を見上げるといつの間にか真っ暗な雲が広がっていた。

ポツン ポツンともう二雫落ちたかと思うと、次の瞬間 大量に大粒の雨が降ってきた。


「兄様!何処かに雨宿り―ふっ…」兄様を見上げようとすると、隊長羽織を頭から掛けられた。

「被っていろ、少し走る」
そう言って手を掴まれたので、お礼も言えないままぎゅっ…と羽織を落とさないように捕まえ走った。