濃い緑が目に心地好い。

日々の隊務の疲れを体から追い出す様に、白哉は空気を吸い込んだ。




「白哉様、ようこそ御出で下さいました」

別荘の管理を任せている老夫婦が出て来て、ひょこんと頭を下げた。


部屋の透明な静けさは昨年と変わりなく、風通しが良かった。

「ルキアは…」
「昨日、御着きになりました。今は散歩に出掛けられています」
「そうか」

出された冷茶が美味い。

ちりん と風鈴が鳴った。


書物を捲っていた手をぴたりと止め、縁側に立つ。

昼に近いからか、見上げた陽は目に痛かった。



「あら、白哉様も出掛けられますか?」

炊事場で野菜を洗っていた老婦人は、現れた白哉を見て手を止めた。

「…いや、陽が強いがルキアは日除けになるものを持って行ったか?」
「ええ、日傘とそれからお茶を持って行かれましたよ」
「そうか」

「…屋根の下より木立の影の方が涼むには良いかもしれません。白哉様もどうです?お出掛けになられては」

お茶の入った竹筒水筒を差し出す老婦人に朗らかにそう言われて、一人で待って居られない子どもの様な部分を見透かされた気がして―白哉は黙って水筒を受け取ったのだった。




緑の影が爽やかな涼を与えてくれる。

小道に沿って清流がさらさらと心地好い音色を奏でている。

チ、チ…と小鳥が木々の枝を揺らす。