「朽木さん!出掛けるわよっー!!」

そう言って清音殿は、私をぐいぐいと引っ張り、外へと連れ出した。

夕方になると、最近はもう秋の気配がそこらじゅうに満ちていて、澄んだ涼しさが心地好い。



そして私は 何故か、川原に居る。


「…清音殿、あの、これは」

此の様な所にいきなり連れて来られた困惑を隠しきれない私に構わず、清音殿は何か ひやり とした物を手渡した。

「これも立派な 浮竹隊長直々の任務 なのよ」

清音殿は ふふふ と笑って、しゃきん と鋏を鳴らした。

「はぁ…」
微妙な私の返事を気に留める事もせず、清音殿は薄を選び始める。
私もそれに倣う事にした。


ぱきん ぱきん ぱきん…

夏が過ぎ青さが抜けた薄を切っていく。
清音殿は薄の他にも桔梗、女郎花、竜胆等も集めていた。


抱えた薄の穂が時折、頬を撫でていった。


気が付くと、夕焼け空はいつの間にか紫の薄物を羽織っていた。





隊舎に戻ると清音殿に促され、真っ直ぐ雨乾堂に向かう。


簾を上げた途端、
「おぅ、遅せーぞ!ハナクソ女!!こいつに振り回されなかったか朽木!?」
「御苦労さん、二人共」
と声が掛かり、清音殿はそのまま小椿殿との小競り合いに突入した。…薄をそこに放り投げて。


「沢山取ってきたんだな、朽木」
困って見ていると、腕の中の薄を浮竹隊長が受け取った。

「…あの、これは」

未だ状況が把握しきれていない私の問いに浮竹隊長は
「兎と団子が大好きな お前の為の様な行事だよ」
と、にっと笑って言う。

「兎…!」

ああ、そうだ。今日は十五夜。