―今日は御機嫌が宜しくないようで…
背を滑る指がそれを物語っている
ふ とその動きがとまり
ひとつであった手が両の手に増やされた
そして するり とそのまま、義兄の長い指が
私の首にまきついてきた
「……兄様?」
「お前は私のものか?」
「何を…ぅ」
「答えろルキア、お前はあの赤毛の男のものか?
それともお前の上官のものか?」
おそらく、兄様のなかで渦巻いているのは
昼間 他愛無い立ち話を交わした幼馴染と
夕刻 居残り作業を理由に雨乾堂に引き止めた上官の存在
「…っ兄様…」
私の首を締め付ける指にそっとふれると
それを私の こたえ と捉えたのか力がゆるめられた
「っ…―他ならない、兄様の…」
開放された咽喉で告げると、
多分 指の痕がはりついているであろう首筋に唇をおとされた
再び動きはじめた兄様の指に、身を委ねながら
私は頭の片隅で 安堵 と 喜び を味わう
この人が時折みせる静かな激情は
息が出来ないほど苦しくて
そしてとても甘美な痛みを含んでいる
だから私は貴方を煽る行動をとってしまう
愛されている と確かめる為に
モット?
モドル?