兄様は ずるい
声が嗄れるまで私が啼いていても、
私の頭のなかが、現と夢がぐちゃぐちゃになってしまっていても、
その美しく冷たい表情を、熱で崩すことは無く、
透きとおった瑠璃の瞳で、快楽に呑まれる私をみる
その色は愉しそうな、傍観者のような、“淫ら”だと責めるような
だから私は悔しくて、
兄様をめちゃめちゃにして差し上げたくて、
堪らなくて…
だから 今日こそ…と、
「…っあぅ、兄様!っ」
意識を手放すその寸前で
声を絞り出して、何とか己を引き止める
必死で兄様の首に腕を絡めて
「…っずるいです、いつも…っ」
そう耳元で囁いて
その首筋に軽く、歯をたてた
すると兄様は
一瞬、瞳を見開いて、
次の瞬間には、これまでに見たことの無い
ゆるく口元を歪めた 愉しそうな表情を浮かべ、
「心配いらぬ 共に、堕ちてやる」
言葉が、唇に降ってきた
あぁ、やっぱり敵わない と
先程より、今迄より、一層 激しく、執拗に、意地悪に
私を追いたてる兄様を霞みはじめた瞳の端で映しながら降参した
快楽は倍返しで
やっぱり、ずるいです…兄様…
モット?
モドル?