白い花弁が時折降る 木蓮の木の下で






「―っ…」

乱れた黒髪を右手で煩わし気にかき上げながら、白哉兄様は私から身体を離した
眉根を寄せ、私と目を合わせず、淡々と着物を直すこの人は決して 情交の後だというのに満ち足りた表情をしない



「…」
私もいつまでも其処に横になっているわけにもいかず、かくかくとまだ僅かな震えが治まらない腕で何とか起き上がる

強く押し付けられた所為で、背に花弁が貼り付いていた

真っ白だった其れは、私の重みと 白哉兄様の重みと
そして“行為”によって、まるで擦過傷を受けたように茶色が滲んでいた



指で其れを撫でると、じくり じくりと胸に痛みがはしる


「…早く戻れ」

そう言葉をかけられて仰ぎ見ると
兄様は其処に在るものを拒むように瞼を伏せて、直ぐに背を向けて行ってしまった


私はまたぼんやりと、花弁の傷に指を滑らせて…




傷付いたのは 誰

汚れたのは どちら 汚したのは どちら 汚されたのは どちら









真っ白だった其れは
もう元に戻ることは無く





モット?

モドル?