私が朽木家に入って迎えた最初の緋真様の命日


いつもと違う 何処か脆さを感じさせる白哉兄様の御姿に
其の御心を僅かでもお慰めすることが出来ないだろうかと、ひとり思った





その十年後の緋真様の命日


兄様は一日中、私を避けておられるようであった





その二十年後の緋真様の命日の夜


縁でひとり、減らない杯を持ったまま動かず
其のまま 冷たい夜の空気に溶けてしまわれるのではないかと思い、
冷えた夜着にそっと羽織を掛けようとすると、
其の腕にきつく絡めとられ 接吻を受けた

己の愛しい者の名を何度も呼び掛けながら、“他人”の私が受ける其れは
塩辛く苦い、哀しい悲しい味がした





そして、其れからの命日の夜


此の夜だけ 白哉兄様は私を何度も抱いた


どうやら此の人のなかでは、此の日だけは私は“愛しい彼女”と写るらしい




一日限りの、兄様 の 箱庭


その“彼女”の名前を身に受ける度に、私の心は砕け散り
その砕けた心の欠片で、此の人の御心の隙間を何とか埋めようとする私は、

私達は何て、滑稽なのだろうか









モット?

モドル?