雨乾堂の窓からは楓をはじめとする木々が散らした葉で彩られた庭がみえる

硯に筆を預け、暫しその秋の画に惚けていると
俺の腹の虫が鳴いたのとほぼ同時に、凛とした声が戸の外より届いた

「浮竹隊長、失礼致します」
「朽木か、入っていいぞ」
静かに障子戸が開く

「七番隊から書簡を預かって参りました」
朽木は俺の姿を認めると、窓際まで躙り寄って書簡を差し出した

「他に仕事はありますか?」

文机の上に散らばる文書をみながら尋ねる朽木に
少しは休憩したらどうだ、と言いたくなる が
この娘はきちんとした休憩時間でないと休まない といった
真面目 且つ 俺からしてみれば損な性分であったのを思い出す

「そうだなぁ…うーん……―お、そうだ」



足の下では さかさか さくさく と乾いた音を地面を覆い隠す枯葉が奏でる

「…庭掃除…ですか…?」
「ああ、このとおり落ち葉が凄くてな」

庭に連れ出され、竹箒を手渡された朽木は怪訝な表情を浮かべている

「ちょっと俺は用事があるから、頼む」
俺は笑いながらそう言って、瞬歩でその場を後にした








「あの、浮竹隊長 集めた葉はどうすれば」

戻ってきた俺に、朽木はその背丈の半分はあるであろう落ち葉の山をみながら尋ねた


「随分しっかり集めてくれたんだな…これなら充分だ」
落ち葉の山の傍に不要になった文書の束と、麻の袋を置く

「何ですか……甘藷?」
「さっきから腹の虫が煩くてな、今ちょうど休憩時間だろう? 少し付き合え」

「え、ですが…」
朽木の言葉には何も返さず、丸めた紙に火を点けて焚火をはじめる
その傍に屈んだ俺の隣に、「…では、お言葉に甘えて」と朽木もしゃがみ込んだ




「温かいですね…」
「此処のところ一気に冷え込んできたからなぁ」


ひらひら ひらひら
辺りに葉が舞い落ちる
目の端に映る 赤や橙、黄の残像


「…また、掃除しないと」
自分の頭に落ちてきた葉を指で回しながら、朽木は口を尖らせている
「積もってからでいいさ―ほら、焼けたぞ」

懐から懐紙を取り出して、半分に割った芋を包んで渡すと
ふうふう と息を吹き掛けながら、朽木は湯気が立つ芋にちいさく齧り付いた

「美味しい…!」
「それは良かった」

ほっこりとした控えめな甘みが口に広がる
空いていた腹に温かさがはいっていく



「…兄様にも、」
「…」

ぽつり… と出てしまった呟きなのだろう
ばつが悪そうに、口元を手で押さえている

自分が感じたことを、この娘はただ純粋に共有したいのだ―義兄と

ぱちん、と微かな音をたてて爆ぜたのは
焚火の小枝か、それとも


「そうだな…白哉も喜ぶと思うぞ?」

にっこり と善い上司の笑顔で、たった今焼きあがった芋を懐紙に包んで差し出す
その先には困惑の表情


…そんな顔をされたら、仕方ないじゃないか


「ほら、熱いうちに届けてやれ これは任務だぞ」

「―っ、有難うございます!」
ほわり とあたたかな笑顔がかえってきた

ぱたぱた と小さな足音が遠ざかっていく




「女心と秋の空、か…」

そう呟き、溜め息を吐きながら夕焼け空を見上げると
その茜色が沁みて、思わず瞳を閉じた






ぱち、と また何かが爆ぜた音が茜空に消えていった










サボタージュ浮竹隊長…報われない浮竹隊長…
このあと小椿&清音に見つかり更にぎゃあぎゃあ言われてしまいそうです(笑)

立ちはだかる“兄様”を越える(倒す…?)のは至難の業かと思います…

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