先に帯を解いたのはどちらであったか
先に肌に手を触れたのはどちらであったか

わからなくなるくらいに、求め 求められた−…



「……っ」
熱くて、僅かにはしる痛みに眉をひそめると、
首もとから白哉兄様が顔をあげた

唇を軽く滑る舌に、思わず己の唇を合わせれば
頭に添えられた手によって、更に深く 接吻は長く

冷気に当てられた肌は、移動する唇と指で溶かされていく
次々と暴かれ 隠せない己の肢体に、何だか急に恥ずかしくなって手で口と目を覆えば
逆に感覚が過敏になって、大きな波へと呑み込まれていく

「や…、−兄 様」
腿に手が掛けられたことに慌て、上体を起こそうとすると
兄様のしなやかな でも、しっかりとした躯が目に入って 目を反らした

「ルキア」
はっきりと私の名が呼ばれ、反射的に向くと
顎を引き寄せられ、啄むように唇を遊ばれる

「ん……、ぅんっ!」
顎に添えられたのとは反対の手が、私の内の快楽を引き出そうと蠢く
意地悪に 私の意識を翻弄して
「や、ぁ…」
「目を 開けろ…」
言われたとおりに、羞恥に固く閉ざしていた目蓋を上げると
額と額を軽く合わせられる


至近距離で見つめ合う兄様の瞳は、とても深い色をしていて
僅かに 目の周囲が紅に染まっていて−みとれてしまった

「っ…白哉……兄様」
脱げかけの袖を掴むと、兄様は私を横たえて
「ルキア−、」

愛 し て いる

その言葉は、突如 身を襲った痛みとともにからだに刻まれる

「あ  、」
「−っ」

呼吸がままならなくて、カクカクと震えがくる
兄様はそんな私の頬に手を添えて、首すじから耳へと口づけをふらし
「…すまぬ ルキア、すまぬ 、」
と何度も耳元で呟く

謝らないで 下さい−…

私が、望んだことなのだから


そう 伝えたいのに、口は自由がきかず、頭は仰け反ってしまう
せめて と兄様の背に手を回すと

ようやく、目が合った



「…だい じょうぶ、です」
「、ルキア」

嬉しくて
「…っあ」
あたたかくて
「ルキア」
愛しくて
「あ、…っ兄様」
とても しあわせで
「−ルキア…っ」


今だけは

今だけは、不安も 苦しみも 哀しみも忘れさせて−

「兄様、兄様…白哉 兄様…!」
意識を手放す 瞬間

汗か それとも、
微笑んだ兄様の目許から、ひと雫 零れたのを見た













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